6.10.24

マップが合わない時 その3

 マップが合わない時 その3



同年同月掲載の『マップが合わない時 その2---エアコン編』で、エアコンの温度調節について記載しましたが、人工内耳もエアコン調節とよく似ています。


2024年6月掲載の『人工内耳と魚』項で、最後に、

「特殊形側線器の受容細胞は感覚毛がなくなり、いずれも電気受容器に分化している」

と、記していますが、人間の場合も内耳の感覚毛がなくなってしまうと、電気受容器への連絡を探索するしかないようです。

人工内耳は、内耳の感覚毛の代わりに、電気受容器を動かす神経補綴なのですね。


この電気受容器のダイナミックレンジは狭い。

そして、そのままでは急激なラウドネス増強となるようです。

電気刺激と音とのラウドネス増大の比較グラフを、2018年2月掲載の『人工内耳の成人適用基準 2017年』項の6ページ目に転載していますので、見てみてください。


電気刺激ってどのくらい急激なのか?

言葉でいうより体験してもらった方が。。。おもちゃ屋さんで、電気ショック遊具を買ってみてください。

触覚でさえ、ビリッと伝達が速いじゃないですか。

あの速さが電気刺激です。


人工内耳開発者達の書は、聴覚の電気刺激について、そのダイナミックレンジが狭いことを聴覚障害ゆえ。。。とは記していませんでした。

聴覚障害だから、ではなく、どうやら人間皆同じく狭いダイナミックレンジの電気受容器をもっているもようです。

聴覚器官のシステム、有毛細胞やシナプスなどのパーツが電気受容器の狭いダイナミックレンジでも聞き取れるように、潜時遅延や強度段階など工夫して聞こえの範囲を拡げていると解釈しています。

エアコンが設定を中心に、温度や湿度、風量、方向などをファジー調節しているように。。。


有毛細胞はいわゆるファジー機能だったのかぁ。。。人工内耳はこれをまねしなければならなかったのでしょうね。


人工内耳は機械ですから、工学的にみた反対側からの観点で、これを圧縮と呼んでいるようです。

神経学的には電気反応による聴覚検査などの説明に、圧縮/希薄と書いていたりしますが。。。これは中央値から見る観点でしょうか?

人工内耳装用者からの観点では、聞こえないところからみるのですから拡張か圧伸というところ。


でも、エアコンに設定温度が必要なように、人工内耳にも快適に聞こえる域の適正設定が必要。

特に、自動調整を取り入れるというのなら、やはり快適域の適正な設定が重要な筈。


バイオニクス社やメドエル社は、Cレベルを快適域とみなし、Tレベルは自動設定。

コクレア社は、TレベルとMCレベルを決定し、そのダイナミックレンジ内に快適値Cレベルが来るようにしているようす。


音声のダイナミックレンジをまかなえることは基本的に重要。

背景雑音にマスキングされてしまわないような圧伸も重要。

音楽を楽しめることも意外と生活には重要。

指向性も、コミュニケーションを考えたら重要。


人工内耳は初めて成功した神経補綴といわれています。

ですから、前例がなく、装用者の成果や声を聞きながら、こうした重要事項を確保する制御方式なる符号化法を考えつつ進歩してきたようです。

又、その間の集積回路テクノロジーの進歩も大きいもよう。

そして、インピーダンス測定など、マッピングの際に外部と内部の機器、器官の通信がバランス的に等価になっているか確認する補助的機能の進歩も大きい。


ネットの翻訳サイトでも数年前まではでたらめな翻訳文章になることが多く、人による訂正が必要と思っていましたが、今の翻訳は時間的にも内容的にもよくなっている。

(寧ろ、私など年を取るたびに段々。。。う~ん。)

AIの自然言語処理も以前と比べるとスムーズな会話になってきており、人間に近くなってきているという人もいる。

音声模倣も、社会問題になるくらい近似したものになっている模様ですし。。。

ですから、人工内耳の自動調整も以前と比べたらアップしているのではないかと思えています。


10年前には、テレメトリーや自覚的判断を中心としたマッピングについていろいろ記していましたが、テクノロジーはその頃から刻々進んできています。

自分で調節するほうが良いのか、オートでやってもらうほうが良いのか。。。マッピングにはそういうことも念頭に置いて、いろいろと試聴してみてください。


担当Drや担当ST、メーカーの方が、その際の一番の強力な協力者になるかと思います。

原理をしっかり知り、担当の方々を信頼して、何より自機に愛情と自信をもって、マップを最適にしていきましょう!

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