著者知らず、時期知らずの記事
前のPCの保存ファイルから見つけた日本の文書を2つばかり(どちらも長いので一部分だけを抜粋)転載します。
一つは著者名が、もう一つは記載時が分からないのですが、どちらもずいぶん前にネットに公開されていたと思います。
最初のものは、おそらく京都大学サイトからで、時期は2000年代?
小児の人工内耳装用について述べている部分をここに転載します。
その次のものは、大島渉氏とあり、時期はおそらく40~45年くらい前?
世界が人工内耳黎明期で競っていた頃の研究でしょうか。
<著者知らず編>
2)自験例の紹介
以下に我々が人工内耳手術を行った小児16名(手術時平均年齢:2歳~12歳、平均5.6歳)の結果を紹介します。
(現在では20名を超えています。以下のデータは暫定的なもので、今後、逐次更新する予定です。)
先天性の高度難聴が8名、後天性難聴が8名で、術前は、髄膜炎で両側聾となった一人をのぞいた全例で一定期間(10カ月~8年)補聴器の装用が行われていますが、これによっても全く、あるいは殆どコトバの発達が見られていないために手術となって います。
これらの小児のうち、補聴器で音感がえられていた子どもの平均補聴器装用閾値は500Hzが67dB、1kHzが67dB、2kHzが75dB、 4kHzが87dBでした。
一方、術後は全ての例で音感が得られ、人工内耳の装用閾値は500Hzが平均44dB、1kHzが42dB、2kHzが 41dB、4kHzが44dBであり、残存聴力があった例の平均に比べても人工内耳によって25dB程度の改善がえられています。
とくに、高度難聴児の補聴器装用では4kHz以上の高音域で殆ど入力が得られない場合が多いのですが、人工内耳では全音域で均等な閾値がえられます。
術後の聴覚言語機能の評価には患児の発達に応じて、通常の語音弁別検査か行動観察に基づくIT-MAISを使用しました。
ここでは、7歳以上の例では母音と単音節子音の弁別検査、それ以下の年齢ではIT-MAISの結果を示します。
術前に語音聴力検査が可能であった症例の術後の語音弁別成績は術後1年で言語習得後失聴児の母音が平均93%、子音が平均65%、一 方、言語習得前失聴児では母音が平均76%、子音が平均11%と、やはり言語習得後失聴児の成績が良好でした。
IT-MAISのスコアは、術前は平均 10%と低値でしたが、言語習得中失聴児の1例では術後、急速にスコアが上昇し、6カ月で100%となりました。
言語習得中失聴児の他の1名と言語習得前失聴児ではスコアの上昇は緩やかですが、術後3カ月ころから徐々に明らかな聴性行動の向上がみられ、以後6カ月で37%、1年で83%、2年で100%と、着実な上昇が確認されています。
これらの結果を総括すると、人工内耳手術を行った小児例全てにおいて、術後に聴覚言語の発達が見られ、その効果は言語習得後あるいは言語習得中の失聴児では急速に、言語習得前失聴児では徐々に、しかし確実に現れるという事になります。
また、術前の観察期間には見られなかった聴覚言語の発達が、人工内耳の術後3ヶ月以降で確実に観察されたことは、現在の手術適応の基準が、これらの子どもで適切であった事を支持するもの考えます。
症例によっては人工内耳の効果が明確になるのに数カ月を要し、これは聴覚言語の発達が年余にわたる事からすれば当然のことですが、翻ってみると術前の補聴器装用の効果判定期間も少なくとも半年くらいは取ったほうが良さそうです。
3)話し言葉の発達
コトバの聞き取りと発声、構音には密接な関係があります。
米国のマレーらは人工内耳装用の小児34名の表出言語について長期の観察を行った結果、まず最も構音運動が観察しやすい両唇音から正確に習得され、一方、構音点の観察が困難な硬口蓋音、軟口蓋音、声門音などの構音が最も不正確である事を報告していますが、これは補聴器装用の難聴児と同様の結果です。
また構音方法についても着実な進歩が見られ、特に摩擦音 /s/ , /z/, /f/ の正確さが、術後6年で60%に達していますが、これは人工内耳では高音域の語音情報がより確実に入力できるためと推測されます。
母音についても同じく良好な発達が確認されています。
さらに、この観察期間の最終年(6年)においても、これらの指標は飽和しておらず、人工内耳装用小児では、より長期間にわたって構音の発達が続くものと推測されます。
<時期知らず編>
聴神経興奮時期に関する実験的研究
京都府立医科大学耳鼻咽喉科学教室(主任:水越治教授)
大島 渉
本実験の目的は、蝸牛マイクロフォン電位(CM)に対する聴神経の興奮位相を調べることにある。
低周波数(50Hz)音響と電気バイアス刺激を継続的に付与する条件下での、高周波数テスト音に対する全神経活動電位(N1)の振幅を、テスト音のみの場合のN1振幅と比較した。
また、音響刺激50Hzの三角波および正弦波に対する単一聴神経線維からの活動電位(AP)の発生数も記録した。
以下の結果が明らかになった。
1) AP放電のメカニズムにおいて、CMが極めて重要な役割を果たしていることは間違いない。音響刺激と電気刺激とでは、興奮の位相が約180度異なる。これは機械-電気変換説と整合するものであった。
2) すべての単一聴神経線維で、基底膜運動の速度成分および変位成分に対する応答が認められた。
3) N1の実験での興奮位相は、音響刺激下ではCMが正から負へ転じるゼロクロス点であり、電気刺激下ではCMが負から正へ転じるゼロクロス点であった。
4) 単一聴神経線維の特性周波数(CF)によって、興奮位相が体系的かつ段階的に変化した。低いCFの線維の一部はCMの正ピーク付近で興奮が見られ、高いCFの線維の一部はCMの負ピークおよび有毛細胞を流れる電流の最大ピーク付近で興奮が見られた。
5) 2)、3)、4)での結果は、機械-電気変換説のみでは説明できなかった。したがって、内有毛細胞と外有毛細胞との間の電気的相互作用について考察する必要があると思われる。
STUDIES ON THE EXCITING PHASES OF THE ACOUSTIC NERVE
WATARU OSHIMA, M.D.
Department of Otolaryngology, Kyoto Prefectural University of Medicine, Kyoto
The purpose of these experiments was to study the exciting phases of the auditory nerve against cochlear microphonics.
Whole nerve action potential (N1) amplitudes to the high frequency test tones under continuous low frequency (50Hz) acoustic and electric bias stimulation were compared to N1 amplitude to the test tone only.
The numbers of action potential(AP) from the single auditory nerve fibers were recorded to 50Hz triangle and sine wave acoustic stimulation.
Following results were obtained.
1) There was no doubt that CM played very important role about the mechanism of AP discharge. The exciting phases were different almost 180 degrees under between acoustic and electric stimulation. It was agree with the mechano-electrical theory.
2) The responses were noticed to the velocity and displacement components of the basilar membrane movement in the all of single auditory nerve fibers.
3) The exciting phase was the zero-crossing point from positive to negative of CM under acoustic stimulation and zero-crossing point from negative to positive of CM under electric stimulation in the N1 experiments.
4) The exciting phases moved systematically and gradually depending on the characteristic frequencies (CF) of single auditory nerve fibers. Some of the low CF fibers showed exciting phases near the positive peaks of CM and some of the high CF fibers showed exciting phases near the negative peaks of CM and maximum current peaks through the hair cells.
5) The results in 2), 3) and 4) were not able to explained by means of only the mechano-electrical theory. Therefore, there was a possibility to think about the electrical interaction between the inner and outer hair cells.