6.10.24

更新報告

  更新報告  2024年10月



前回、2024年8月掲載の『人工内耳と指向性マイク』項の終わりの方で、ストリームによる聴取について少し触れていましたが、そのことで訂正があります。


「ケーブルにつないで人工内耳に直にストリームさせる方法は、音量的には安定しているのですが、音質的には、私には上記の聞き方で聞くよりも分かりにくいという感じです。クリッピングかな? 理由がよくわからないのですが。。。」


と記していましたが、原因が分かりました。


テレビにケーブルでつないだ送信機用ドッキング機器に音量調整ボタンがついていることが当初は分からず、送信音量が最大になっていました。

(調整ボタンがドッキングの色に溶け込んでいる為、一見するとドッキング機器には送信機差込口とケーブル類差込み以外、何もないように見えるので。)


送信機はロジャーイン。

そのドッキング機器はテレビ音声を受信機にストリームさせる他、充電器の役割も果たしています。

送信機自体には音量調整がないのですが、テレビ音声をストリームさせるドッキング機器には機器と同色の音量調整ボタンが側面についてあり、それで送信音量を調整できるようになっていました。


受信機はロジャーフォーカス。

「人工内耳に直にストリームさせる方法」と書いていましたが、正確に言うと。。。

送信機のマイクでテレビ音声を拾うのではなく、テレビと送信機をケーブルでつないで無線を飛ばし、人工内耳のマイクにチューブ接着した受信機にストリームしてテレビ放送を聞く方法、です。


当初、ドッキング機器の音量調整ボタンに気付かず、大きな音量で送信していた為、人工内耳機器か受信器の方で音量制限されてしまったようです。

だから、クリッピングに似た聞こえになっていたのですね。


音量調整ボタンで適正音量に直すと、聴取が大幅にアップしました。


送信マイクの設定を話者モードに変えてテレビから50cm位の距離に置く、テレビからの距離を1メートル未満くらいにして人工内耳で直に聞く、などと別の聞き方を記していましたが、そのような方法よりもドッキング機器からストリームして聞く方がずっと分かり易い聞こえです。


こちらの扱い方の問題で、誤った感想を記してしまい。。。申し訳ありません。

発売元のフォナック社にも、大変失礼致しました。


遅くになりましたが、今月の『更新報告』項のほか、前回掲載項の方にも訂正とお詫びを伝えさせて頂きます



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今月の掲載にあたって、4年前の同月10月の掲載を読んでみましたら。。。

不思議と4年後の今でも、文章のところどころを少々いじるだけで通用する。


時代が繰り返されているわけではないのに、何だか被っているところがあるものなのですね。


そこで。。。項目名も同じにして「その2」とし、わざと被らせた掲載を試して見ました。


2020年10月掲載と同様の項目で、下記のとおり、新規掲載です。



①新規:『掲載遅延のお知らせ  その2』項、新規掲載です。


②新規:『マップが合わない時  その2---エアコン編』項、新規掲載です。


③新規:『マップが合わない時  その3』項、新規掲載です。


掲載遅延のお知らせ その2

 掲載遅延のお知らせ  その2



2024年10月初頭..。コロナニュースはあまり見かけることもなくなってきましたが,まだちらほらマスクをかけている人もいる(10月なのに暑い中)この頃です。


今はどこの国でもですが,コロナで持ち出しになった経済を立て直す為にとられた政策の影響で物価が上昇、それに圧迫される生活をどう支えていくか、そういうことが政府の課題になって来ているところでしょうか。


こうした課題がある中、日本では石破首相での政権が誕生、10月1日夜に新内閣が発足したところですが、米国ではこれから次の4年間の大統領が選出される選挙が間近になったところです。

米国大統領選挙を前にして、両党首とも討論会で挙げた直面すべき課題に対する対策案を目玉に票獲得に走っています。


選挙レースの中盤では、再選をかけて臨んでいた片方の党首、現米国大統領が最初の討論後にコロナにかかってしまい選挙はどうなることかと危ぶまれたりした時期もありました。

この党首、まもなく回復してテレビでも元気そうな姿を見せていましたが、討論会に続きの災難で考えるところがあったのか、レースを現副大統領に譲ることを表明し、よもや初の女性米国大統領が生まれるかもしれないという状況になっています。


ともかく、両党首での4年間をそれぞれ体験した投票者がどちらの方が良かったか考える当初の状況が、相違が大きくなった(性別、年齢、人種など)両党首のうちのどちらの方が良い未来をつくるのか考える状況になったという、予想外の展開をする2024年です。


社会の方では、コロナ禍の影響で急速に普及に進んだITテクノロジーがAIを浮上させ、それをコンピューターメーカーが競って新製品に採用、ちょうど4年前に購入した私のコンピューターも来年にはもうサポートされない旧機種に仲間入り、という早急なIT世代交代の悲劇を被っています。


日本でも家電店に行けば店員さんが新製品のAI機能を紹介してくれる。。。デモとしてカレーの作り方とか聞いてくれたりする。

(AIの紹介するレシピを全部揃えたらスパイスだけでレストラン代金が飛びそう。。。)

AIを相手にコミュニケーションするのは私には向かないかも。。。と思えてきました。


人工内耳でも。。。AIによる調整がなされる話はちらほら見かけます。

人工内耳にAIとは何ぞや?  環境適応や雑音抑制などの方面で使うということなのでしょうか、マイクの指向性を自動調整にするということなのでしょうか、ダイナミックレンジを最適に動かすということのなのでしょうか。。。AIという言葉からではどのような実装なのかよく分かりません。


まさか脳に変わって言葉をまとめてくれる、話の要約もしてくれる、意味もちゃんと正してくれる。。。なんてことをしてくれる人工内耳が出現するわけではないでしょうし。


PCメーカーはじめ色々なところでAI採用が活発になっていますが、目下のところ人工内耳の方はこれといったニュースはありません。

寧ろ、人工内耳の一番重視すべき点は、昔からそれほど変わっていないのではないかとさえ思えています。


掲載月が来て、書き始めた10月分なのですが。。。

今回は、4年前の同10月掲載に被らせながらの掲載になりますので少々遅れますが、ご了承の程よろしくお願いします。


マップが合わない時 その2---エアコン編

 マップが合わない時 その2---エアコン編



2024年10月初頭は夏。。。

これはもう。。。人工内耳のマップが合う合わない以前に、体温の調整が合わない、と思いませんか。


気温の快適域は26℃前後の筈で、そこに服など身に着けて普通に生活できる。

それなのに、30℃を超える秋。。。着けた服は汗で密着し、頭は朦朧としてきます。


人間の体温は36.6℃くらい、お風呂でも40℃とか平気で入っているし。。。と思っても、やっぱり我慢できない暑さです。


自然に反すると思っても、エアコンを稼働させなくては、干からびる、というより、蒸し焼きになりそうな残暑。


というわけで、『マップが合わない時 その2』が題名なのですが、まずはエアコンについて。。。


エアコンの設定って、どのくらいにすべきなのでしょうか?

「おあしす」のスペースはそれほどないので、24℃設定でスイッチオン。

天井吊下げ形のエアコンですが、時間がたつと涼しくなってきます。

30分もするとエアコン効きすぎかも、と。。。設定温度を変更することに。


以前、幹細胞を培養するのにどのくらいの温度が最適なのかと聞いてみたことがあるのですが、その返答は37℃とのこと。

実際、その温度で培養された細胞達は、増殖してノービノビうごめき始めるではありませんか。


考えたら、私達が体温計で計る温度は腋の下で、36,6℃くらい。

アメリカでは口の中、あるいは直腸で測るらしく、37℃くらい。

母親のお腹にいた頃はおそらく37℃くらいで生活していたのではないでしょうか。


自身の体温や生活環境が36℃以上を体験してきているのに、どうして気温が30℃くらいでも暑くてたまらないのでしょう。

根性論で頑張ってみましたが、ギブ。。。


反対に、どうして気温が20℃以下に下がると寒く感じるのでしょうか。

エアコン24℃でさえ、しばらくすると効きすぎなのか頭がズキズキします。

書をあさると、人の身体には温度受容器があって、暑いと興奮してシグナルを出す温受容器と、寒いとシグナル信号を出す寒受容器が体表にあるのだそう。


それぞれ専用の神経線維と接続され、脳の体温調節中枢へ通信するのだとか。。。これが求心性。

遠心性の方は、脳の体温調節から皮膚の温点あるいは寒点と、熱の放散や産生のために連絡を取り合うとのこと。

体温調節中枢は脳の視床下部という部分に局在していて、シグナル受信や指令発信を受け持つのだそう。


詳しくはそれを専門に書いている人のものを参照してみてください。

ここではエアコンのことについて。。。ですので。


気温の快適域は、26℃くらいを中央値として、その±2℃前後くらいでバランスをとっているとすると、だいたい24~28℃くらいでしょうか。

体温より約10℃低い気温が快適と感じるのは、人体ではそのくらい低めの気温と体温とが等価とみなされるような何らかのシステムがあり、それで温度感覚のバランスが取れているということでしょうか。


あまり難しいことは考えずに、26℃に変更してみると。。。

26℃くらいで心地よい。

しかしながら、エアコンが大型の為、音もそれなりで。。。

エアコンの音も長く続くと辛いと思いながら、設定リモコンを見ていると、「ドライ」というのもある。


気温がびっくりするほど高い国でも、湿度が低いと日陰に入るとそんなに暑くないのですよね。

もしかすると、日本は湿度があるから暑いのかも。。。

「冷房」ではなく「ドライ」にすればどうなのだろう?

「冷房」を止めて「ドライ」にしてみました。


う~ん、冷房をかけたのとそれほど変わらない?

どう違うの?と、思って、ネットで調べたところ。。。

「ドライ」はスイッチオンした時の室内温度をセンサーで記憶し、それを基準として、除湿後の空気を調整するのだとか。


部屋の空気を吸い込み、それを「冷房」と同じく冷やして結露させ、そこで出る水分を捨てて空気だけ部屋に戻す。

これが「ドライ」の中でも「弱冷房除湿」だそうです。

もう一つ、吸い込んだ空気を冷やして除湿するけれど、除湿後の空気が部屋の温度より低いと、室温に温め直す「再熱除湿」というものもある。


私の場合、先に冷房をかけてからドライに変えたので、ドライ時の基準の温度は冷房後の部屋温度になります。

だから、室温としてはあまり変わりを感じられなかったのですね。

暑い部屋で「ドライ」をオンにすると(特に「再熱除湿」では)、冷やして結露水を除いた空気が記憶された部屋温度より低いので温め直されてしまう、これだと湿度は下がるけど、温度は下がらない。

夏場にこれをやるというのは、電気代の無駄のもよう。


実際、電気代は、

「弱冷房除湿のドライ」<「冷房」<「再熱除湿のドライ」

に上がっていくのだそうです。

一般的に設定では、「弱冷房除湿のドライ」が「ドライ」と表示され、「再熱除湿のドライ」が「除湿」と表示されているようです。

(エアコンメーカーによるかもしれません、確認を。。。)


エアコンでの「ドライ」の使い方としては。。。

①最初に、「冷房」をしばらく入れて部屋の空気を快適域に入るように下げる。

②次に、「ドライ」にしてスイッチオン時の室内温度をセンサーで記憶させ、除湿する。

③最後に、湿気がとれ身体も冷えてきたら、扇風機をサブからメインにしてもよいかも。

というのが、健康面でも経済面でも機器管理面でもおすすめの方法のようです。


ところが。。。今書いていることはもう遅いことなのかも。

今はAIテクノロジーの時代。

自動でやってくれるのですよ、こんなこと。

今の、というか、しばらく前からエアコンというのは、温度も湿度も人感知もセンサーでチェックして、自動でちゃんと調節してくれる。

知らないから、私が自分で「冷房」を選択していただけで。。。


「自動」とはなんぞや? と思って調べてみると。。。

「自動運転にすると設定温度に対して体感温度の補正を行うので、年間を通じて快適さを保ちながらさらに省エネ運転ができます」

とあります。


「自動」とは正確には冷暖自動というものだそう。

「運転中、ある室内温度を境に冷房運転⇔暖房運転が自動で切り換わります。

設定温度は変更できますが、運転内容が切り換わると設定温度も自動で変更します。

(室温を一定に保つ運転ではありません。)」

とあります。


例えば、自動冷房で27℃にセットするとして。。。

室内温度が25℃以下になると、設定温度が22℃に変更されて、送風運転に切り換わる。

これを自動暖房というそうで、更に室内温度が22℃以下になると暖房運転が始まる。

暖房→冷房の時も同様とのこと。


エアコン自体で無駄なく調節してくれるのですね。

これをAIというのか。。。昭和の時代ならファジー(Fuzzy)といっていたような気がしますが。

ネットで「ファジー」を調べてみると、コトバンクのサイトでは、

「人間の思考のあいまいさに枠組みを与えて推論・処理する」

ものだそう。

ファジーとは「ぼやけた」という意味合いで、どうやらはグラテーションのような概念。


わかりやすく言えば。。。

人工内耳のマッピングでも、最初に「聞こえない」「小さい」「やや小さい」「ちょうどいい」「やや大きい」「大きい」「大きすぎ」などの音量の大きさ合わせをやりますよね。

あのあいまいな感覚がグラテーションで、ようはあれと同じ。


人間の肌感覚のような曖昧さをエアコンが判断して、「寒すぎ」「寒い」「ちょっと寒い」「ちょうどいい」「やや暑い」「暑い」「暑すぎ」などの場合の調整を心掛けてくれる、というもの。。。今ではこれよりもっと細かく段階を増やしたものがあるようです。


正確には、温度や湿度のセンサー情報を、人間のグラテーション感覚に合わせてコンピューター制御する、それがエアコンを自動操作する、ということでしょう。

今では、これをAIと呼ぶ。。。のかな。

(自然言語処理での駆動も組み合わせて、声掛けでスイッチオンできる機能もある、ということでしょうか。)


エアコンの方はここまで、です。

やっと題名のマップ云々について書き始めます。

10月初頭の暑さがそこまででなければ、スムーズに話に入っていたと思うのですが。。。

もうここまでで文章が長すぎるので、『その2』は終了。


この項は『エアコン編』として、何年か後、エアコン操作を忘れてしまったときに見返せるよう、備忘録として残します。


マップが合わない時 その3

 マップが合わない時 その3



同年同月掲載の『マップが合わない時 その2---エアコン編』で、エアコンの温度調節について記載しましたが、人工内耳もエアコン調節とよく似ています。


2024年6月掲載の『人工内耳と魚』項で、最後に、

「特殊形側線器の受容細胞は感覚毛がなくなり、いずれも電気受容器に分化している」

と、記していますが、人間の場合も内耳の感覚毛がなくなってしまうと、電気受容器への連絡を探索するしかないようです。

人工内耳は、内耳の感覚毛の代わりに、電気受容器を動かす神経補綴なのですね。


この電気受容器のダイナミックレンジは狭い。

そして、そのままでは急激なラウドネス増強となるようです。

電気刺激と音とのラウドネス増大の比較グラフを、2018年2月掲載の『人工内耳の成人適用基準 2017年』項の6ページ目に転載していますので、見てみてください。


電気刺激ってどのくらい急激なのか?

言葉でいうより体験してもらった方が。。。おもちゃ屋さんで、電気ショック遊具を買ってみてください。

触覚でさえ、ビリッと伝達が速いじゃないですか。

あの速さが電気刺激です。


人工内耳開発者達の書は、聴覚の電気刺激について、そのダイナミックレンジが狭いことを聴覚障害ゆえ。。。とは記していませんでした。

聴覚障害だから、ではなく、どうやら人間皆同じく狭いダイナミックレンジの電気受容器をもっているもようです。

聴覚器官のシステム、有毛細胞やシナプスなどのパーツが電気受容器の狭いダイナミックレンジでも聞き取れるように、潜時遅延や強度段階など工夫して聞こえの範囲を拡げていると解釈しています。

エアコンが設定を中心に、温度や湿度、風量、方向などをファジー調節しているように。。。


有毛細胞はいわゆるファジー機能だったのかぁ。。。人工内耳はこれをまねしなければならなかったのでしょうね。


人工内耳は機械ですから、工学的にみた反対側からの観点で、これを圧縮と呼んでいるようです。

神経学的には電気反応による聴覚検査などの説明に、圧縮/希薄と書いていたりしますが。。。これは中央値から見る観点でしょうか?

人工内耳装用者からの観点では、聞こえないところからみるのですから拡張か圧伸というところ。


でも、エアコンに設定温度が必要なように、人工内耳にも快適に聞こえる域の適正設定が必要。

特に、自動調整を取り入れるというのなら、やはり快適域の適正な設定が重要な筈。


バイオニクス社やメドエル社は、Cレベルを快適域とみなし、Tレベルは自動設定。

コクレア社は、TレベルとMCレベルを決定し、そのダイナミックレンジ内に快適値Cレベルが来るようにしているようす。


音声のダイナミックレンジをまかなえることは基本的に重要。

背景雑音にマスキングされてしまわないような圧伸も重要。

音楽を楽しめることも意外と生活には重要。

指向性も、コミュニケーションを考えたら重要。


人工内耳は初めて成功した神経補綴といわれています。

ですから、前例がなく、装用者の成果や声を聞きながら、こうした重要事項を確保する制御方式なる符号化法を考えつつ進歩してきたようです。

又、その間の集積回路テクノロジーの進歩も大きいもよう。

そして、インピーダンス測定など、マッピングの際に外部と内部の機器、器官の通信がバランス的に等価になっているか確認する補助的機能の進歩も大きい。


ネットの翻訳サイトでも数年前まではでたらめな翻訳文章になることが多く、人による訂正が必要と思っていましたが、今の翻訳は時間的にも内容的にもよくなっている。

(寧ろ、私など年を取るたびに段々。。。う~ん。)

AIの自然言語処理も以前と比べるとスムーズな会話になってきており、人間に近くなってきているという人もいる。

音声模倣も、社会問題になるくらい近似したものになっている模様ですし。。。

ですから、人工内耳の自動調整も以前と比べたらアップしているのではないかと思えています。


10年前には、テレメトリーや自覚的判断を中心としたマッピングについていろいろ記していましたが、テクノロジーはその頃から刻々進んできています。

自分で調節するほうが良いのか、オートでやってもらうほうが良いのか。。。マッピングにはそういうことも念頭に置いて、いろいろと試聴してみてください。


担当Drや担当ST、メーカーの方が、その際の一番の強力な協力者になるかと思います。

原理をしっかり知り、担当の方々を信頼して、何より自機に愛情と自信をもって、マップを最適にしていきましょう!