2.12.21

人工内耳と鳥

 人工内耳と鳥



ここ2年ほど遠ざかっていた集会も、今年はようやくサンクスギビングで楽しむことができるようになりました。

イコール、人工内耳での聞こえも久々に集団の中へ。


普段は静かな環境で過ごしているため、大勢で集まる場所というのは本当に久しぶりです。

開放感のある半屋外、屋根と側面がコンクリート作りになっている中での集会。


皆が話し始めると、やはり分かりにくい。

加えて、屋根や壁からの反響が結構感じられます。

向かいも斜めも後ろも皆がしゃべっているので、トータルして雑音まみれです。

うるさいときは、話者の近く50cmから1mくらいまで近寄って聞けばわかるのかもしれませんが、木編み椅子が並べて置かれてあって、それぞれの話者が誰でも自由に参加しやすいようにそれぞれ広く話しているので、近くに寄って独り占めのように聞くというのは無骨。

しかも、母語ではないもので、談笑込みの早口、慣れ口が反響音とコラボして、お手上げ状態です。

ア・カ・ンと思って、早々退散。。。というか、そこにいた小さい子供と静かな廊下を散歩していました。


翌日、そのうちの8人で連れ立ってレストランに朝食に。

レストランにはもうクリスマスソングの音楽が流れていました。

席について話を聞き始めると、音楽が低く抑えられた雑音のように変化して、その代わりに会話が音質は良好とはいえなくとも、結構入ってきます。

席に着く前の音楽のみの時は音楽が分かったくらいなので、これはマイクの閾値が会話標的に上がっているのだろうなぁと理解しました。

確かに、人の声が重ならないように、そしてある程度の音量があれば2メートルほど離れた席の人の声でもギザギザ音質は否めないものの入ってくることは入ってくるのですから。

その状態の会話を聞きながら思ったのは、英語母語者なら交わされている会話がまあ何とかつかめるだろうなぁということ。

静かなところでは、ダイナミックレンジが拡がるため声の音質はきれいになる(いきなりの声や大きな声はつぶれて聞こえることもあります)のですが、うるさいところだと声はギザギザっぽい音質で、聞きなれているならつかみ取る感じでわかるだろうなぁという音質。

雑音が抑えられて、その上に浮き出る部分を聞くという感じの声。

これが自動利得調整(AGC)が効いていなければ、声が背後音と混じってしまい、音に翻弄されるだけになったと思います。

こういう経験をうんとしておくと、音質にも慣れていくのかも。。。(私の英語リスニング力も関係しているのですが)と思いながら会話を少しでも理解しようとしていました。


そこからの帰り道、幅広い車道の脇を歩いたのですが、車の走行音は手術後音入れ最初のころから今なおも変わらず私には不思議な雑音です。

以前の音とは全く違った聞こえの印象で、車の音はホワイトノイズだからこのような音になるのか、と思っていました。

ところが、その後、波打ち際を歩いてみたところ、打ち寄せる雑多な波の音はごく自然に聞こえるではありませんか。

波の音の方が、道路の車走行音よりホワイトノイズといえるのではないかと思うのですが。。。

打ち寄せる波、打ちつけあう波、しぶきを上げる波、全て自然に聞こえます。

海に足まで漬かってこの音を聞いていると、いつまでも聞いていられる気分になって、浜沿いにショッピングに行く当初の目的を放棄して海の浅瀬でたたずんでいました。


海辺には、ハマシギの部類に入る海鳥が集団で戯れていました。

そろそろ夕刻になっていくかという時間なので、休息を取り始めるシギ達もいました。

羽を一つずつ整え、首を後ろに回して、長めのくちばしを両翼の間に埋めます。

体内の血行の関係?で一本足で立ち、薄目にした瞼を開け閉めしながら休憩に入ります。

若い鳥などは、白い波しぶきが押し寄せてくると、パッと足を下ろしてトトトトッと機敏に駆け足移動するのですが、成鳥はもはや波くらいでは動かない。

それでも近くを歩く人がいると、すぐに動きを感知してトトトトッと避難移動します。

薄目でも見えているのかなという印象。

どのくらい見えている?

気になって、シギ達に近づいていきました。

近さ1メートルもいかないうちに感知してあっという間に分散してしまうシギ達。

正確にはミユビシギですが、この浜の人はエサを与えない為か、人慣れはしていません。

寄ってくることはなく、近寄っていけば避けられます。

どうやって見ている?

感知方法が気になって、今度はダルマさんが転んだゲームのように、ほどんど分からないくらいのスローな動き、というか止まったままと思えるくらいの動きで時間をかけて近づいていきました。

すると。。。すぐそばまで近づいているのに気が付きません。

静止物体と思われているのかもしれませんが、十数羽ほどいるミユビシギは片足を挙げて寛いでいます。

動きがないものはあまり見えていないのでは?

そんなことまで思えてきます。

鳥の目はかなり良い、と思っていたので、この結果は意外です。

履いていたサンダルを、黒い裏面をゆっくり動かしてみましたが変化なし。

見えていない?

今度は蛍光ピンクの表面に翻して、少し早めのスピードで掲げてみました。

すると、合図もなく一気に一斉に離散しました。

色のせいだったのか、スピードのせいだったのか?

ともかくこの鳥には見える条件がある様子です。


翌日、再度浜辺に行くと、明るい日差しの中でミユビシギが又集団でトトトトッと動き回っています。

動きが止まって休憩し始めるのを待って、前日と同じように近づいていきます。

やっぱりゆっくりだと気が付かないのか、見えないのか、気にしてないのか。。。良く分からないのですが、逃げる様相はありません。

薄目にしたり拡げたりと瞼の動きはあるのですが、どうも見ているように見えないのですが。。。

鳥さんに聞いたってわかるものではないので専門家が書いたものから知るしかないのですが、鳥の目は人間の何倍もよく見える、といったことしか書いてない。

紫外線まで見えるとか、目のレンズをズームしたりできるとか。。。

うーん、こちらは手を伸ばせばつかめるところまで近づいてきているのに、なんか見えているようには見えない。

動きがないものは見えないのかも。。。鳥さんだって、いつもズームのように見えていたらしんどいだろうし。

そう思って、シギ達に見えないように私の背中から頭上に指で貝殻を弾き飛ばしてみました。

と。。。

ヒッチコックの鳥!

カッと眼をむき出して、すごい勢いで飛び掛かってきたんです、1羽ならず集団で。

突飛した貝殻に向かってですが、なんという形相!

あまり大きいとは言えないミユビシギですが、羽を広げて目を大きくむき出して飛び掛かる様はなんと大きく見えること。

飛ばした貝殻は、爪くらいの小さな白い貝殻。

でも、親指の背を利用して飛ばしたので、結構スピードがあります。

動体視力、といって、動きがあるものを素早く感知する視力に鳥は恵まれているのではないでしょうか?

ごくわずかな動きでも、短時間で変化する異質スピードを見逃さない?

だから、あの広大な海の上からでも、打ち寄せる波の動きの中でも、違った動きを見せる魚を捕らえられるのではないでしょうか?

しぶきの残る波打ち際でも、砂辺に残る小さな虫の動きが分かるのではないでしょうか?

遠くからエサを見つけて飛びついていく姿だけを見ると、確かに鳥はものすごく目が良いように思います。

でも、これほど近くまで近づいても見えているように思えない体験をすると、鳥のレンズ調整はセンサーが働かないとだめなのか?と思えたりしています。

危機を感じたり、エサの動きを感じたり、と何らか動きのセンサーの閾値に触れるようなことがないとレンズはズームアップされないのかも。。。

センサーが働かないときは、あまり見えていないのかもしれない。。。と思えています。

ここではミユビシギについて感じたことなのですが。。。

鳥を飼っている人、バードウォッチングに興味がある人、検証してみてください。


と、ここで又、人工内耳の話に戻ります。

どのくらい見えている?

どうやって見ている?

見えていない?

と私が鳥に感じたように、人工内耳の聞こえも他の人にしたら疑問なのでしょうか。

今回、聞こえについて記述したのもそう思えたからなのですが。。。

人工内耳は鳥のレンズと同じような動きで、聞こえが快適に得られるように動作します。

人の有毛細胞ほどの働きはできないけれど、騒がしいところでは閾値を下げて、マイクが人の声を拾いやすいように調整するようになっています。

状況変化によってあまりに多くの雑音が入り乱れたり、静かなところで小さな雑音に悩まされたりすることを避けるためです。

それでも限界はあるのですが、全く聞こえなくなった状態からの回復ですから、会話が聞き取れるようになったということはかなり大きな恩恵です。


もう10年ほど前になりますが、人工内耳のボリュームを30dBに固定したままで通常の一日を過ごすとどうなるか試してみたことがあります。

3階にいるのに窓の外の何らかの定常音が大きく響いて来たり、廊下の話声がガンガン煩くて聞いていられなかったり。。。1日どころか20分でギブアップしました。

(だから、鳥の目についても、常にズームしているとしんどいだろうなぁと思ってしまうのですが。)


人工内耳のダイナミックレンジは自動調整が通常になっていますが、おそらく生来の耳ももっと精密な自動調整があるのだろうと思えています。

変化を感知するスピードも鳥の目のように早く、だからあまり感じないのかもしれないけれど。。。



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