人工内耳の成人適用基準 その5: ”60-60”
新型感染症騒ぎが酷かった間、情報がネットに頼るしかなくなってしまい、積極的に動くことをやめてしまいました。
その傾向は、騒ぎが下火になった今でも私の中にも又社会にも部分的に残ってしまい、ネットで読める以上の些細なことがわからなくなってきています。
例えば、今、米国では、人工内耳の適応基準は”60-60”、という流れが生まれています。
これは、聴力レベル60dBHL、明瞭度60%、を基準に人工内耳の装用を奨励していこう、という傾向です。
正式にFDAがこの傾向に人工内耳機器使用の承認をしているのかどうか、ハイブリット含めこれまでの承認済みの中に近い内容ともいえなくはないので医療機関の裁量によるアバウトさで認められているのか。。。そういった理解はあやふやなままです。
英語版のWikipedia「cochlear implant」を見ればわかると思いますが、米国での人工内耳装用者は数多く増え、2019年までで20万人以上になっています。
その装用も、中度~重度の感音性難聴が対象、と載っています。
昨年の大統領選任レース中にあった討論会では、対立する両候補ともが負担が大きくなっていく医療費・医療保険について大いに自論を戦わしていました。
そういう状況の中、本当に"60-60"が人工内耳の公式の基準となっているのか、うーん。。。実際がよく分からない状態です。
しかしながら、多くの医療機関、オージオロジストのサイトでは60-60の適応基準が語られています。
当サイトの過去記事、2019年6月の『人工内耳の成人適応基準 その4』項から、成人の適応基準の変遷に絞って簡単に抜粋してみますと。。。
米国では今から40年前に標準治療として承認された人工内耳が始まりました。
1985年当時は重度レベルで、明瞭度は0%が対象。
1998年には高度レベルで、明瞭度は40%以下に拡充。
2000年には高度レベルで、手術予定耳の明瞭度50%以下、補聴器をつけても60%以下に。
2014年にハイブリット(残存聴力活用型)人工内耳の承認で、低周波数が正常~中等度レベルでも高周波数が高度レベルで、手術予定耳のCNC明瞭度60%以下、反対側耳が80%以下に。
この2014年頃から米国では、明瞭度60%以下、というのが手術の検査に向かうだいたいの目安になってきていたのかもしれません。
かくして。。。この今では人工内耳は”60-60”(聴力レベル60㏈HL以上、明瞭度60%以下)を適応の評価に、と推奨されているのです。
”60-60”のデメリットは。。。補聴器ではとりあえず音だけでも聞こえていた自身の聴力が、人工内耳手術でほぼなくなってしまうことでしょうか。
インプラントの挿入がない低音部分に残る可能性はありますが。
”60-60”のメリットは。。。補聴器装用しても言葉が聞き分けられなかった(明瞭度60%以下)人が、人工内耳で明瞭度が上がり、言葉が分かり易くなるということでしょうか。
静寂下での単語や文章テストでは、会話音量で平均的に80%以上は聞き取れるレベルになる、とされています。
どちらが良いかを選ぶのは、成人の場合、本人次第となるでしょうが、補聴器でも困難となるほどの聞こえに悩んでいるのなら、人工内耳が勧められる筈です。
”60-60”と数値で適応基準が示されていることは、補聴器で苦悩している人には検査を受けてみる分かり易いガイド的な後押しになるのではないでしょうか。
日本でも残存聴力型人工内耳(そもそも人工内耳は主に高周波領域に挿入なのですが。。。)が出始めた頃から、おおよそそれくらいのレベル(目下は低音部)で手術が容認されています。
補聴器が役立たない程になった聴覚障害者は人工内耳を。。。と日本耳鼻咽喉科学会も積極的にメッセージを出しています。
そのうち、人工内耳成人適応基準は”60-60”という数値を目安にするようになるのかも。。。
0 件のコメント:
コメントを投稿