聾学校訪問
先日、許可を得て初めて聾学校を訪問させて頂きました。
補聴器や骨導補聴器の児童もいましたが、重複障害の児童さん含めて人工内耳を装用している児童さんが多いことに驚きました。
そして何より印象的だったのは、皆、生き生きと聞いて、話して、歌って、動いていたことでした。
校庭で運動している児童達、その授業は様々な学年ミックスでのようでしたが、マイクやスピーカー、FMシステムの様な無線は不要。
それは屋外だからではなく、授業でもそうだとのこと。
皆、ハッキリと話す先生の声を聞き取り、感じ取り、理解して、楽しそうに指示に従って授業を受けていました。
小学部の低学年の一クラスでは、4名ほどの少数人数で机を教壇に向け半円状に並べ、先生と向かい合わせに授業を受けていました。
教壇の横には、大型のモニター。
授業を受けている教科の内容が映し出されるそうです。
一人一人にタブレットが与えられ、児童たちはアプリを上手に使いこなして授業を受けていると説明を受けました。
授業内容も、通常の同学年と同じ内容、同じ進行ということ。
黒板とモニターを上手に使いながら、先生が生徒に向いて話されています。
先生は普通に口頭で教えていて、生徒も普通に耳で対応しています。
アレ? 先生も耳に補聴機器(大きさからすると人工内耳?)が。
先生と生徒が聞こえの感覚を共有できる状況で授業が行われるというのは、児童にとってはすごい安心感を与えているのではないかと思わされました。
音楽のクラスでは、学年を超えて教わっている人数なのか、十数人くらい?の児童さんが歌を歌っていました。
先生が分かり易く、歌詞が書かれたボードをポイントしていましたが、皆さん上手に歌を合わせて歌っていました。
楽器の演奏も習っている様子です。
聾学校に来る前は、手話での授業とかもイメージしていたのですが、全然そのイメージじゃない。
聾学校というより、普通に授業を楽しむ小学生たちがそこにいる、という感じ。
勿論、手話を使う児童もいるにはいると思います。
運動の授業時に、生徒同士で内緒話?とかするのに、パパッと手話を出したりしている児童さんもいましたから。
でも、基本、聴取と口話で普通に授業を受けている感じで、それも自然に。
校内では手話が出来ない先生もいらっしゃる。
出来る方もいらっしゃるけれど、いずれも口頭の会話を話す。
近ければ少しゆっくり目の、抑揚を押さえた声で話される感じ、生徒さんにはこの口調で話し慣れているのかな?
聾学校の先生とは2人程度しか話していないので他の方もそうなのかどうかわからないのですが。
ST学校で教員をされていた聾学校の元校長先生という方の話し方とよく似ていていました。
(それが大多数にとって聞き取りやすい話し方ということなのでしょうか?)
学校訪問は午前よりも午後の方が学校の方々が助かるのかな、と気を利かせたつもりだったのですが、これは失敗。
幼児部のクラスは午前だけ行われているそうで、午後の訪問では皆さん帰宅された後だとか。
それでも廊下を通りすがりに、授業後に残っていらしたのでしょうか? 発音体得をされている最中の幼児部の児童さんを少し目にすることが出来たのは嬉しいことでした。
先生からマンツーマンで発音を教わっている最中の児童さんの横に付き添っていらっしゃる親御さんらしき方がいました。
実際に訪問してみると、聾学校に対して持っていたイメージがどんどん覆させられます。
以前の人工内耳の講演ビデオで、米国の医師が、以前とは違う別世界にいる、といったような発言をされていましたが、聾学校の実際をみるとさもありなん、という感じです。
(実はオーストラリアでも聾学校の授業は聴覚中心、ヘッドホンをつけた聴覚活用で授業を受けたりタブレットの使用をしているということは、連絡下さった学校の方からの紹介ビデオを見て知っていました。
が、その方曰く、日常では会話で済ます学生が多いけれど、それでも教育にはまだ手話が必要、と書簡で述べられていました。
もう10年以上も前の昔の話で、もう古い情報になっているのかもしれません。)
今回の聾学校訪問では、幼児部から小学部なので感想を述べるのは難しいとのことで、1人1人の学童の意見は聞けなかったのですが、ヘッドホンやFMなど使用せずとも普通にコミュニケーションをとって授業を楽しんでいる小学生達ばかり、生き生きと授業を楽しんでいる学童ばかりでした。
聾学校、すごいじゃない!
ここでしっかりわかる授業を受けると、確かな学力が付くのでは、と思えたくらいです。
学校選択は、児童の希望などの他、親御さんの希望や方針などもあって色々であるけれど、聾学校で力をつけて、通常学校に移っていく児童さんも多いのだとか。
聾学校の存続に関わってくるので、喜ばしいことなのかどうかはともかく、聾学校の魅力をアピールしていかなくては。。。というようなことを仰っていました。
実は、今回聾学校を訪問させて頂いたのは、新しい無線システムのニーズを調査する為でした。
教育委員会の方に連絡を取り、数か所、通級学級のある小学校も訪問させて頂く予定を立てていました。
その最初に聾学校を訪問したわけですが、通常の小学校の通級クラスには、聾学校の先生方が担当しており、週に何回か小学校に行かれているとのこと。
聾学校の授業を見学させて頂けたおかげで、地域の小学校の通級クラスでも同じく、通常の授業スケジュールで学習されている様子が想えてしまい。。。地域の小学校に見学に行く必要がなくなってしまいました。
地域の学校で孤軍奮闘している児童さんには聾学校でとは又違った方面からの視点があると思いますし、困難も聾学校より多いかもしれないのですが、それでも、聾学校の学童達の様子から思えたのは。。。
地域の学校に通う児童達もそれぞれの場で自信を持ちつつ乗り越えようとしているだろうということ。
ニーズは通級クラスの先生なり担任なり親御さんなりに自ら発することが出来るだろうと。
追伸:
ここで学童さん自身に言いたいことが。。。
ニーズがあるなら自ら強く発してほしい、と。
例え大人の人工内耳装用者からしても、聴覚障害のある学童諸君それぞれのニーズは実際には言われてみないと分からない。
ましてや健聴の人達には予測もつかない、言われないと分からないのは当然、だからこそ自らニーズを発してほしい。
学校が冷遇?することがあるのかどうかは分からないけれども、ニーズをきちんと発して初めて気付きや供給という思考が生まれ、そこからやっと事が動くというものだから。
だから、困難があり解決する為のニーズが分かるなら、周りの人や教育委員会などにきちんと伝えてほしい。
そうしたニーズはきっと将来の聴覚障害学生の教育を自然に良い方向に変えていくものになるとも思うので。
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