1.10.17

聴覚障害とABR

昨年からおかしくなっていた電動シャッターが、ついにシャッター会社からのドクターストップがかかる状態になり、目下、閉鎖して整備待機中です。
電気系統云々を言う以前の話で、もう機体が経年老朽化、巻上げ部にガタがきてしまっていて取り替えなければならないとのこと。
確かに昨年動いていた時もガチャギシッと軋み音がひどく、その動きもガタンガシャンとあまりスムーズとは言い難いものでした。

シャッター自体は1819年もの、「おあしす」が始まってもう少しで7年になろうとしていますから、その以前に10年以上の活動歴があったという引継ぎものです。
今まで一度も変えられないでここまで動いてきたのかと思うと愛おしくも思えるのですが、稼働に支障が出るようになると問題、もしも人に害を与えることになると大問題ですから、修理ではなく更新という話で待機中です。

シャッターくらいすぐに。。。と思ってしまうものですが、モーターを使う電動シャッターである事、シャッターが巻きつくポールの中央部に大型エアコンがドーンと居座っている事、その為に天井を抜かなければならない事など色々事情があって、少し長めの待機中になっています。
人間や哺乳類の場合は老朽化といっても成長期以後の話、成長期まで伸び代があるけれど機器は。。。製品として生み出されてきた時からもう確実に老朽の方向にしかカウントされないのですから、仕方がないものですね。

これが補聴機器の場合なら、ハード部が壊れてしまったというところなのでしょうか。
補聴器も人工内耳も同じく電気機器。
やっぱり何年も経つうちに修理が効かなくなって、いつかは寿命がやってきます。
それも私たち生物よりもずっと早く。
機器の値段は半導体や技術の進歩のおかげで初出時に比べて下がってきてはいるというものの、高性能の補聴器や人工内耳などまだまだ十分に高い機械です。
各地の県市町村での補装具負担、手術時や故障時の保険適用がある現今は有難いもの、稼働に不安を感じ始めたらまず機器状態を診断してもらう事です。
人体に害を与えることになると問題になるのは同じですから。

ただ。。。厄介なのは、以前にも掲載したように人体(神経)も電気で動くものですから、どこからどこまでが機械からの影響かという事。
突然聞こえが変わったとか、調整時におかしくなったとか、そういう変化はすぐに気がつき易いと思います。
ゆっくりと徐々に長年かけて劣化していく場合は、人体の方もそうですからややこしい。
(人工内耳の場合はマッピング時にコクレア社ならNRT、バイオニクス社ならNRI、メドエル社ならARTと呼ばれる機能で神経反応を見ることができますが、その日の体調や状況で反応にも幾らか誤差は出ますから機械判定も万全というわけではありません。)

調整時の記録を自身でも控え、その経緯と新しい設定とを比較してみる、その際の着眼点を理解しておく事も助けになるかもしれません。
補聴器の場合は、たいていの人がオージオグラムの読み方を理解して自分の聴力レベルを把握するところまでになるものと思います。
オージオグラムの読み方がわからない人でも、近所の補聴器屋さんに行って聞けば分かるように教えてもらえるでしょう。
人工内耳のマッピングも。。。その原理を理解すれば、オージオグラムが分かるようにマッピングも分かるものです。

患者サイドの観点からは、こうした機器の調整を一般的理解に普及し得るオージオロジストの養成をして欲しい、と思ってしまいます。
リハビリをするSTさんも大事と思いますが、多様化してきた医療的聴覚機器に求められるのは、原理を理解して調整を担当するオージオロジストに思います。
オージオロジスト養成制度を設けるのが難しければ、補聴器調整の経験技師やSTに神経系や聴覚補綴機器を勉強するルートを与えて、医療機関にて実際の現場マッピングを行って貰う追加認定制度を作るとか出来ないものでしょうか。

補聴器におけるオージオグラムの役割は、どの周波数域をどのくらい増幅すれば会話域がカバー出来るかという目安になる事です。
人工内耳においてはそれが各電極における電流量になるわけですが、会話域をカバーする反応を出すには各周波数域でどのくらいの電流量を流せば良いか、それが各電極に設定されるというのがマッピングです。

分かり易い例で言えば、人工内耳に似ているものはABR検査。
実際、人工内耳が代理すると見做されているのはABRの中でもⅠ波なのです。
前述したNRTNRIARTも原理はECAPと言われているように、Ⅰ波を型作るCAPの電気刺激版なのです。
このⅠ波は、内耳の有毛細胞とそれによって引き起こされる神経活性電位で成り立っており(蝸電図に相当)、その後の神経活性に影響しています。

例えば、Ⅰ波やOAEが良好な聴覚障害者と、Ⅰ波やOAEが不良な聴覚障害者では、オージオグラムで同じ聴力であっても、その聞こえは変わってきます。
特に補聴器をつけての効果で、その違いが現れてきます。
ABRはそうした病理を見るとともに、人工内耳治療で矯正可能かを見る目安にもなるのです。

2014年以来、ABR検査が必要とされるようになったと巷では言われているのですが、補聴器が有効でない聴覚障害者に人工内耳が推奨されるのが普通になっている現今では、明らかに内耳性難聴と分かっている場合を除いてはABR検査を行ってどこに病理があるか、どういったタイプの聴覚障害かをみる事は普通のチェックに思います。
それによって恩恵を受けられる聴覚障害者も増える筈ですし。

2014年の誤報道騒ぎは何だったんだろうと腹ただしく思います。何よりもあの美しい音楽、Hiroshima が埋もれてしまったのは、特に北朝鮮の核に揺れている今ではかえすがえすも残念。著作権は佐村河内氏にあるとされたのが救いで、再びホールで奏でられるようになる事を願っています。)

聴覚検査に馴染みのない方には難解に思えるかもしれませんが、いまや簡易な脳波らしきものもウェアブルになって、職場でも活用されて行くというニュースも出ているくらいです。
オージオグラムの読み取りと同様に、ABRの読み方にも馴染んで欲しいもの、それが各自の聴覚治療や調整に役立つ知識になると思いますし、それが高じてオージオロジストの養成要請気運に結びつけば尚幸いです。

今回は遠くは中東のイラン、Hashemi氏のスライドを掲載させて頂きます。

工学を専門として教えておられるだけあって、聴神経に焦点づけて具体的にまとめておられる事、日本で習うのとちょっと異なる観点で分かりやすく書かれている事、そうした点から是非引用させて頂きたいと願った次第です。

0 件のコメント:

コメントを投稿