更新報告
2025年最初の更新です。
今回、人工内耳の基準や聴覚障害の認定に対する考えを覚書きしています。
2025年が良き年になりますよう。。。
①新規:『人工内耳の成人適応基準 その5:”60-60”』項、新規掲載しました。
②新規:『聴覚障害の認定』項、新規掲載しました。
③新規:『マップが合わない時 その4』項、新規掲載しました。
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更新報告
2025年最初の更新です。
今回、人工内耳の基準や聴覚障害の認定に対する考えを覚書きしています。
2025年が良き年になりますよう。。。
①新規:『人工内耳の成人適応基準 その5:”60-60”』項、新規掲載しました。
②新規:『聴覚障害の認定』項、新規掲載しました。
③新規:『マップが合わない時 その4』項、新規掲載しました。
人工内耳の成人適用基準 その5: ”60-60”
新型感染症騒ぎが酷かった間、情報がネットに頼るしかなくなってしまい、積極的に動くことをやめてしまいました。
その傾向は、騒ぎが下火になった今でも私の中にも又社会にも部分的に残ってしまい、ネットで読める以上の些細なことがわからなくなってきています。
例えば、今、米国では、人工内耳の適応基準は”60-60”、という流れが生まれています。
これは、聴力レベル60dBHL、明瞭度60%、を基準に人工内耳の装用を奨励していこう、という傾向です。
正式にFDAがこの傾向に人工内耳機器使用の承認をしているのかどうか、ハイブリット含めこれまでの承認済みの中に近い内容ともいえなくはないので医療機関の裁量によるアバウトさで認められているのか。。。そういった理解はあやふやなままです。
英語版のWikipedia「cochlear implant」を見ればわかると思いますが、米国での人工内耳装用者は数多く増え、2019年までで20万人以上になっています。
その装用も、中度~重度の感音性難聴が対象、と載っています。
昨年の大統領選任レース中にあった討論会では、対立する両候補ともが負担が大きくなっていく医療費・医療保険について大いに自論を戦わしていました。
そういう状況の中、本当に"60-60"が人工内耳の公式の基準となっているのか、うーん。。。実際がよく分からない状態です。
しかしながら、多くの医療機関、オージオロジストのサイトでは60-60の適応基準が語られています。
当サイトの過去記事、2019年6月の『人工内耳の成人適応基準 その4』項から、成人の適応基準の変遷に絞って簡単に抜粋してみますと。。。
米国では今から40年前に標準治療として承認された人工内耳が始まりました。
1985年当時は重度レベルで、明瞭度は0%が対象。
1998年には高度レベルで、明瞭度は40%以下に拡充。
2000年には高度レベルで、手術予定耳の明瞭度50%以下、補聴器をつけても60%以下に。
2014年にハイブリット(残存聴力活用型)人工内耳の承認で、低周波数が正常~中等度レベルでも高周波数が高度レベルで、手術予定耳のCNC明瞭度60%以下、反対側耳が80%以下に。
この2014年頃から米国では、明瞭度60%以下、というのが手術の検査に向かうだいたいの目安になってきていたのかもしれません。
かくして。。。この今では人工内耳は”60-60”(聴力レベル60㏈HL以上、明瞭度60%以下)を適応の評価に、と推奨されているのです。
”60-60”のデメリットは。。。補聴器ではとりあえず音だけでも聞こえていた自身の聴力が、人工内耳手術でほぼなくなってしまうことでしょうか。
インプラントの挿入がない低音部分に残る可能性はありますが。
”60-60”のメリットは。。。補聴器装用しても言葉が聞き分けられなかった(明瞭度60%以下)人が、人工内耳で明瞭度が上がり、言葉が分かり易くなるということでしょうか。
静寂下での単語や文章テストでは、会話音量で平均的に80%以上は聞き取れるレベルになる、とされています。
どちらが良いかを選ぶのは、成人の場合、本人次第となるでしょうが、補聴器でも困難となるほどの聞こえに悩んでいるのなら、人工内耳が勧められる筈です。
”60-60”と数値で適応基準が示されていることは、補聴器で苦悩している人には検査を受けてみる分かり易いガイド的な後押しになるのではないでしょうか。
日本でも残存聴力型人工内耳(そもそも人工内耳は主に高周波領域に挿入なのですが。。。)が出始めた頃から、おおよそそれくらいのレベル(目下は低音部)で手術が容認されています。
補聴器が役立たない程になった聴覚障害者は人工内耳を。。。と日本耳鼻咽喉科学会も積極的にメッセージを出しています。
そのうち、人工内耳成人適応基準は”60-60”という数値を目安にするようになるのかも。。。
聴覚障害と認定基準について
現在、米国では人工内耳の装用基準を”60-60”に、という流れが生まれているもよう。
この"60-60”とは何ぞや?
”60-60”のうち、前半の”60-”は聴力レベルの60dBHLを示しています。
この60dBHLとは、補聴器を使ったとしても、学業でも就業でも小さくはない支障が出ているレベルです。
60dBHL以上の聴力レベルでは、調整がよく効く補聴器の購入が必須となっているでしょう。
"60-60”のうち、後半の”-60”は語音明瞭度の60%以下を示しています。
この60%以下という語音明瞭度は、デジタル補聴器を使用したとしてもコミュニケーションが難しく、音を理解する補助に、視覚、蝕覚、推測も駆使しているのではないでしょうか。
そういう不自由さを鑑みて、”60-60”のレベルでは人工内耳が推奨される、という流れになってきているのですが、その根底には、このレベルになると人工内耳の方が良い聞こえを提供する、という見解があるからです。
この”60-60"に、日本も準じるようになった場合、現在ある聴覚障害認定制度とのギャップが生まれるという問題が生じます。
聴覚障害の認定を受けていない層の手術ということになり、医療現場でもやりにくいものが出てくるのではないでしょうか。
(高額医療費を活用できるとはいえ。。。)
(おあしす注: 高額療養費のこと。)
この際、人工内耳を装用するかしないかは別問題として、聴覚障害の認定の見直しをしてもよいのではないでしょうか。
以前、そのような声が上がっていたようですが、今の制度を50dBから、と見直すというのは伝音性難聴の関係もあって難しいものかもしれません。
なら、聴覚レベル60dB以上で聴覚障害認定の級をつけるのはどうでしょう。
伝音性難聴でも、中耳などの手術をして予後が良くなる方はいいのですが、補聴器装用だとこのレベルになると聴取は厳しくなってくると思いますし。
他には、聴力レベルはそこそこ良いけれど、補聴器を使用しても明瞭度60%を満たさない感音性難聴の方。
2018年12月の『人工内耳の日のイベント』項でも、耳鼻科医との質疑でこの問題に触れたのですが。。。
人工内耳の適応になる障害かどうかは不明として、補聴器をつけるとかえって聞き取りにくくなってしまう(裸耳の明瞭度より悪くなる)ような聴覚障害の方もいらっしゃる。
4級の身体障害者認定基準は語音明朗度が50%以下のもの、となっており、70dBレベルに満たない聴力の場合、裸耳の語音明瞭度が50%を超えると聴覚障害認定に該当しない。
このような聴覚障害者への配慮も考慮して、認定基準の見直しができないものでしょうか。
・聴力レベル60dB以上から
・感音性難聴60dB未満、OAE良好、補聴器使用で語音明瞭度60%以下から
を聴覚障害認定に加えることはどうなのでしょう。
将来に向けて、認定基準を”60-60”の風潮に準じるものに見直しては。。。という提案です。
マップが合わない時 その4
2020年10月の『マップが合わない時』項で、「マッピングの設定や感覚の一致を分かりやすく」と記していたのですが。。。そのことに触れます。
マップの設定は、各自に合わせた電極アレイの形態、位置決めした電極と神経との間隔、それに見合った刺激方法や符号化など、いろいろな術後状況で各自異なる結果になるので、それぞれの担当の調整者さんとやりとりしながら調整を、というしかないのですが、一般的な話として、自分でマップと感覚の合致を知る簡単な方法を。。。
(勿論、これは成人装用者に関してです。これから言葉を覚えていく乳幼児ではありません。)
おおざっぱなものではありますが、自宅でできて本人にも分かりやすい、一番手軽で簡易な判断方法は、というと。。。
別段、特別なことでもなくて、日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会の発表した指針にも書かれていることなのですが。
2024年4月の『人工内耳のアップグレード指針』項を覗いてみてください。
新機種へのアップグレード指針を載せています。
静寂下、65dBSPLの刺激音を1m離れたスピーカで提示した時の人工内耳での単語検査の明瞭度が80%。。。云々が書かれています。
この音量、65dBSPLの声は1m離れた普通の会話音。
一般的な人工内耳の聞こえというものは、静かな環境条件において、1m離れた普通の音声での単語や文章の聞き取りで平均的におおよそ80%以上の聞き分けが可能、ということです。
(CI2004検査は通常の語音明瞭度検査のことではなく、又、%の評価も同等ではありません。)
1m。。。つまり、普通会話の距離と音声で、単語や文章の聞き取りがよく聞きとれていることが大事。
これはイコール、感覚が合っているということ。
そして、快適域も合っている、ということなのです。
2016年8月の『聴覚と末梢神経障害2』項で、オーストラリアでの発表を囲み引用しているように、もうずいぶん以前から人工内耳装用(SPEAK法)しての人工内耳のみで、CID文章正答率が平均的に80%とされています。
(それ故に人工内耳の手術の適応基準は裸耳の良耳50%なら考慮、となった次第で。。。)
聞き取りの様相をきちんと知りたい方は、人工内耳を装用して、1m距離から何らかの単語の聞き取りテストを記録してみてください。
家族や友人にランダムに単語を選んでもらい、或いはレコーダーやスマホで聞きやすい単語集を使い、1か月ごと、1年ごとなど、期間を決めて。
装用当初はともかくとして、調整が落ち着いた後は経時的に良い明瞭度が続くようになっていくと思います。
これが同じ環境条件で、安定せずデコボコしていたり、音量を上げなければ良く聞き取れなかったり、或いは煩くて音量を下げなければ分かりにくかったりすると、快適域が合っていない、ということなのです。
自分でできる音量調整をしても解決しない場合は、マップ調整者に相談し、明瞭度が良く落ち着くように調整してもらってください。
調整しても良くない場合は、アップグレードの機種の方がよりアシストが効くかもしれません。
こうした記録を医療機関でやっている人もいると思いますが、装用当初のうちは定期的につけておく、或いは記録をもらっておくと、異常発生時の参照比較にもなり、マップ必要の発見が早くなりますし、聞き取りの変化も確認できます。
家族から最近聞き取り悪くなったね、と言われたりするより、数値で確認出来る方が自身も納得しやすいのではないでしょうか。
(追記: 適当でもよいという人は、身近な人との普段の会話での聞き取り具合を、時々に比較してみる程度でもいいかのもしれません。
過去の記憶などは曖昧になりがちで当てにならないのですが、アバウトな過ごし方でも長い目で見れば結果的にそんなに変わらないかも。)