人工内耳について その2
上記項目の2014年欄に、『人工内耳について』項が並んでいます。
これは実際には2012年が初掲載。
当初の頃、掲載済み記事を再掲載する際には過去月の掲載分を削除することにしていた為、再掲載とともに2年ほど飛んでしまったというわけです。
この『人工内耳について』項、わずか4ページほどの簡易な記載です。
当時は当サイトの独自スタイルとして、新規月のみ掲載、画像処理掲載、文章や改行規定など厳密に決めたルールでアップしていましたから、結構堅苦しい内容だったかもしれません。
そんな掲載をした2012年から10年。
人工内耳を追いかけて、色々な場所で色々な時間を色々な体験に使ってきて、それがもはや10年。
私もサイトも。。。10年の年を取って丸く?なりました。
この10年の丸みを加えた『人工内耳について』項を、『その2』バージョンとして記しておこうと思います。
<人工内耳って何?>
厳密にいえば、聴的感覚を感じる神経に、生理的に働きかけて聴的感覚を感じさせる神経補綴。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhyv5D0l44t4VfVwdniYneCLBZxXs1nKUdn1Wea3XBJKuFp1WmVO4Q-DOqyCBrETDeGNaqFJrumeH1MwOk_R61hxDaW6Idn87BPiD6zeBoPHmwOpSmcgAmrwrXouH7pLW9ikMIuTj4JCXh7/s1600/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%9903.jpg)
<どうやって感じさせている?>
スピーチプロセッサーにつなげたバッテリーからの電気を蝸牛内に移植された電極アレイに送って聴的感覚を感じる神経に生理的に働きかける。
<どうして言葉が分かる?>
マイクロホンで拾った音をフィルター掛けして伝導コイルからの信号とし、バッテリーからの電流がその信号の通りに送られて神経刺激することで言葉のパターンが分かるようになる。
信号を送る伝導コイル内部の写真 (以前の機種のもの)
信号とともに電力も送信する。
<どうして磁石を入れないといけない?>
フィルター掛けした信号とバッテリーからの電気が一緒に体内に渡るようにするには、磁石を使った電磁誘導を利用する必要がある。
(おあしす注: 電磁誘導が距離的位置的に行われやすいように、磁石を使っている。)
<信号だけを送ることはできない?>
信号は、脳を感覚させる神経の電気符号パターンというだけなので、神経が活性される電気も一緒に送信されることが必要。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEi9jT8oETqZ9xjVKKJzDhfYHUQKioBpHFPuYkCH8iy_mNJAm4nUO8CnTJTMyCJE9r9fhmruKTix3vi0fxv7ZG4j03c6Jif-Osaw7RcxiaHoOH0l7BII5K9XFHOcPUVmjBBrGHe_KZU0sm1Q/s1600/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%9904.jpg)
<どこのメーカーの人工内耳が良い?>
多様なメーカーの補聴器や自動車から自分用を選ぶのと同じで、自分が選んだ人工内耳が一番合っていると信じることが大事。
<人工内耳の更新は必要?>
スピーチプロセッサーのオプション機能が役立つ人もいるが、いずれ数年以上もすると擦傷や故障で更新は必要になってくるもの、又その補助も設けられている。
<日本製の人工内耳はいつできる?>
人工感覚上皮細胞?という構想を読んだことがあるのですが、有毛細胞の働きがない基底膜振動を利用する圧電膜の信号や電気が神経刺激に有効となるのかどうか等で遅れているのでしょうか?
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhbnSmhPdsF9UgxlPuZxWUKCoPDMa9-jDjxPrK08CPNGGsVcCnpV7FRJIcUh-oIdpfnDBX_2vzwp1ilETkPtCSvt4vRajoQgvb7C9QWAZdghQ9UX3sichOtOh_Cs9LZ9YO6JlChxSzIjvA2/s1600/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%9905.jpg)
<人工内耳は普通に聞こえる?>
信号パターンやコンプレッション感覚に馴染み、脳の方からも有毛細胞とのやり取りと同じような扱いをするようになると聞こえ方にはあまり違和感を感じなくなる。
<人工内耳はすぐに慣れる?>
信号パターンは言葉が成り立つようにマップされるので、初めはいろいろな環境音や不明瞭な言葉には違和感が出てくるけれど、きつく感じる音は符号化を修正したり、感覚の方で寄っていく感じがあったりと経時的にだんだん馴染んでいく。
<人工内耳は雑音下に弱い?>
雑音には弱いけれど、マスキングするような音をフィルター掛けで抑制するような設定を備えてきていることや脳の方も雑音パターンに馴染んでくるようで、当初よりはしのぎやすくなってくる。
<人工内耳は安全?>
信号が合っていれば、身体的にも物理的にも安全、寧ろ神経機能を補佐してくれる神経補綴なので機械やロボットのような機器的危惧を持つようなものではない。
<人工内耳の異常は起こる?>
神経補綴とはいえ信号送信装置なので、例えるならBluetoothが途絶えるのに似た聴感異常や無作動など電信的な異常、例えばケーブル断線、電信断絶、バッテリー不足などのような不具合は起こることがある。
<人工内耳の異常時の注意点は?>
調子がおかしい時は、リスニングチェッカーでスピーチプロセッサーの動作を調べたり、送信コイルの電通具合、磁石の様相など機器チェックする、或いはクリニックでの検査、インピーダンスなど内部機チェックを受ける。
内部で砕けていた磁石の写真
危険性はないが、ケーブル劣化と同様に音の途絶えがプチプチ起こる原因になる。
<人工内耳について、どう思う?>
もともと人間は神経が脳に電気を流して生活しており、難聴とは聴神経経由した脳への電気が流れにくくなっている状態、人工内耳の電気を有効に使って人生を謳歌してほしい。
と書くと、人工内耳を選択しない場合を差別しているかのように取られるかもしれませんが、人工内耳を選択しなくたって同じ。
その場合でも視覚や触覚で神経経由の電気を脳に流すのですから、いずれ体内電気を有効に使って良き人生を構築してほしいものです。
ヒポクラテスも。。。紀元前300年前の古代ギリシャ時代から電気を有効に使うべき脳の働きについて有名なセリフを残しているではないですか。
(おあしす注: ヒポクラテスの生涯は紀元前460年ごろ~紀元前370年ごろとあるので、「紀元前400年ごろの古代ギリシャ。。。」)
「喜びを感じる、喚起する、笑う、運動競技を行う、悲しむ、嘆く、落胆する、悲観するといった感情や行動は脳の働き以外の何物でもないことを人は知るべきである。脳の働きによって、それぞれ特別な方法で、知恵と知識を得、見たり、聞いたり、何がバカであるかを知り、何が正しいかを知り、何が良くて何が悪いかを知り、何が甘くて何がおいしくないかを知る。」
(おあしす注: 原著訳は「歓喜する」。「喚起する」も働きの一つですが、打ち込み時の漢字誤変換。)
人工内耳は脳で聞く、ということはそういうこと。
訓練やリハビリと焦る前に、変化を楽しむこと愛でることを(最初は難しいかもしれないけど)忘れないで。