2.8.24

更新報告

 2024年8月 更新報告



今年の春のこと、おあしすも関わる会合への出席や市民講座の人工内耳講演に行くなどあり、話者からの距離や音量、話者のマスク装用といったことにはまだまだ聞こえの不自由を感じる、と感じていました。


FM補聴機器は、こうした悩みに対処する一方法でもあります。

今回は、こうしたFM機器に使う指向性マイクについて記載しましたが、人工内耳の中には強い指向性が出せるようにマイク工夫がなされているものもあります。


各人工内耳のマイクにしても、或いは各無線利用のマイクにしても。。。どのようなものでどのように利用するのが最も有効なのか、特に指向性マイクのことはよく理解して使うことも、意外と大事なことでは、と思わされています。

今回はそれに関しての一筆です。


①新規; 『人工内耳と指向性マイク』項について、新規掲載しました。



人工内耳と指向性マイク

 人工内耳と指向性マイク



人工内耳と無線利用の指向性マイクとの組合せで、ちょっとした体験をしたので、今回、忘れないように覚書きします。


初期の人工内耳の頃からですが、どのメーカーも人工内耳外部機には指向性を考慮したマイクを実装していたと思います。


デジタルマイクの進展で、その感度や調整が変わったかもしれませんが、いずれ前方からの聴取を大事にしているのは昔から変わらないこと。


耳掛けタイプの場合、指向性マイクは人工内耳の上部に乗っています。


ここで。。。バイオニクス社のちょっと変わったマイクのことを記します。


バイオニクス社の場合、上部に乗る指向性マイクを使うのではなく、耳にかけるフックに付くマイク、Tマイクと呼びますが、これを使う設定に変えることができます。


このマイクは自然な耳介の指向性を利用する為、フック先端が耳介横に位置するようになっています。


耳介の横に来るという特徴がある為、電話の受話器でも、聴診器のチューブでも、ヘッドホンでも、普通に使うようにそのマイクに被せて使うことができます。

(今のTマイクⅡではなく、その前のTマイクの時のことですが、Tマイクのおかげで聴診器も特殊な聴診器は必要なく、チェストピースのつくチューブをマイクにつなげるだけで聞こえていました。)


このTマイクに、補聴器耳栓用チューブを使って受信器のロジャーフォーカスを接続し、指向性マイクがある送信器から音を飛ばして無線補聴をしてみました。

状態としては、このマイクを強力な指向性マイクに変えたようなものです。


家の中のような静かな環境では、使用しているテレビではリモコン音量16~20くらいが健聴の耳で通常に聞くテレビ音量という感じ、との感想を前もってもらいました。

健聴の耳では、リモコン音量3まで下げると全く聞こえず、リモコン音量4にしてテレビ近くで聞いてやっと音が鳴っているかなと分かる程度、とのこと。


無線送信器の指向性マイクをテレビにケーブル接続しない、テレビのそばに置く、という条件で、Tマイクにくっつけた受信器フォーカスに飛ばした音の感想は、というと。。。

テレビのリモコン音量1でも、やや小さめですが何か言っているというのは聞こえるのです。

リモコン音量4なんて、ラウドネス音量でいえば60dBくらいの音感覚で聞こえます。


健聴耳をテレビに近付けて聞いてもらったところ、話している内容がしっかり分かると判断したのが、少しずつ音量を上げてリモコン音量10になったところででした。

これがおそらく健聴者にとっては、40dB前後の音量というところでしょうか。


同じ音がロジャーフォーカスを通した人工内耳では、もう60dBはゆうに超える音感覚で聞こえているのです。

音量に限っていえば、普通の会話音量くらいには聞こえているのです。


それだけなら良かったのですが、ビックリさせられた点が。。。

実は、健聴者には聞こえていなかったリモコン音量1でテレビを聴いている時のこと。

健聴との比較の為にテレビに耳を近付けて音を聞いてくれていた人が、立ち上がって隣室に向かいとことこ歩いていったのですが。。。

なんと、普通にスリッパを履いて木材床を歩いているその足音がめちゃくちゃ大きい、ビックリするほどの音量です。

大きい上に割れて聞こえるので、目で見ていなければ何の音か分からないくらいの音量+音質です。

(送信機は音量調整のないタイプのものです。受信器には音量調整機能はありますが、音量を下げてもある程度大きな音量です。ここでは標準設定で使用した感想ですが。)


あまりにビックリしたもので、ふと思い付いて。。。

テレビのある同じ部屋で、送信器マイクをテレビそばに置いたまま、テレビの横側の離れに置かれた電子ピアノを弾いてもらいました。


指向性マイクでも、テレビのリモコン音量4では大きく鳴っている電子ピアノの音の方が回り込んできて、テレビの音をマスキングしてしまう、しかもピアノの音が実際よりかなり大きく聞こえます。


テレビのリモコン音量を10くらいにすると、テレビがしっかり聞こえて、電子ピアノの音がほぼ聞こえない。


ここで送信器マイクの指向性を解いて、送信器マイクの設定を全指向性に切り替えると、テレビそばにマイクを置いているのに、ビアノの音もテレビの音も共に同じくらいに聞こえてきます。

その状態でリモコン音量16に上げると、全指向性でもテレビの方が近いせいか、受信器には鳴っているピアノの音がほどんど聞こえず、テレビ音優先です。

同じく全指向性にしたまま、テレビのリモコン音量6くらいに小さくすると、時にはテレビ聴取に向かう、時にはピアノ聴取に向かう、と音が目移りならぬ聞き移りして、あれこれ変わるのです。

これはちょっと聞きづらい、というか、聞こえが何だか訳が分からず脳が付いていけない。

指向性は固定の方が良い。

再び、指向性に切り替えると、ピアノの音は小さくなり、テレビの音量がよく入ります。


電子ピアノを弾くのを止めて、マイクをテレビそばに置いたまま健聴の人がテレビをみる時の音量20くらいで聞いてみると、アレッ? リモコン音量10で聞くのと同じ大きさ。

もっと音量を上げて大音量の50くらいまでにしても同じ大きさ。

そうなんです、別にリモコン音量が10だろうが、20だろうが、30だろうが、40だろうが、周りの人にはどんどん大きくなり我慢できない音量でも、受信器を通して聞く音には同じ音量感覚で変化しないのです。

クリッピングがかかる聞こえではなく、テレビ音量が音量10くらいに設定されたまま変わらない感じの聞こえなのです。

受信器フォーカスを繋いでいるチューブをTマイクから外すと、Tマイクに鳴っているテレビ音が入ってくるので、音量が上がっているのが分かるのですが、Tマイクに被せてしまうと人工内耳にある他のマイクは使っていない状態なので、音量を上げても実際の音量が上がっているのが全く分からない。

(反面、これは装用者にとっては耳の保護にもなる良い利点とも思います。子供さんなどが使用している場合にも、周りの人が音量のことで耳を心配せずとも良いわけですから。)


そうであれば、と、テレビそばにあった指向性マイクを健聴者がテレビを見る3メートルくらいに離してみました。

テレビ音量20くらいで聞いてみると、音量はテレビそばに置くのとそれほど変わらず、しかし、音質があまり良くない。

(音質は、送信マイクの設定を話者モードに変えて、テレビから50cm位の距離に置く、というのが目下は良い聞こえかも、と思います。そうでなければ、テレビからの距離を1メートル未満くらいにして、人工内耳で直に聞く方がまだ良い聞こえかも、と。

ケーブルにつないで人工内耳に直にストリームさせる方法は、音量的には安定しているのですが、音質的には、私には上記の聞き方で聞くよりも分かりにくいという感じです。クリッピングかな? 理由がよくわからないのですが。。。)


(おあしす注: 上記のテレビからのストリームについて、の追記です。

テレビからのストリームの音声受信問題、理由が分かりました。

テレビにケーブルでつないだ送信機用ドッキング機器に音量調整ボタンがついていることが当初は分からず、送信音量が最大になっていました。

調整ボタンがドッキングの色に溶け込んでいる為、一見するとドッキング機器には送信機差込口とケーブル類差込み以外、何もないように見えるので。


送信機はロジャーイン。

そのドッキング機器はテレビ音声を受信機にストリームさせる他、充電器の役割も果たしています。

送信機自体には音量調整がないのですが、テレビ音声をストリームさせるドッキング機器には機器と同色の音量調整ボタンが側面についてあり、それで送信音量を調整できるようになっていました。


受信機はロジャーフォーカス。

「人工内耳に直にストリームさせる方法」と書いていましたが、正確に言うと。。。

送信機のマイクでテレビ音声を拾うのではなく、テレビと送信機をケーブルでつないで、人工内耳のマイクにチューブ接着した受信機フォーカスでテレビ放送を聞く方法、です。


当初、ドッキング機器の音量調整ボタンに気付かず、大きな音量で送信していた為、人工内耳機器か受信器の方で音量制限されてしまったようです。

だから、クリッピングに似た聞こえになっていたのですね。


音量調整ボタンで適正音量に直すと、聴取が大幅にアップしました。


送信マイクの設定を話者モードに変えてテレビから50cm位の距離に置く、テレビからの距離を1メートル未満くらいにして人工内耳で直に聞く、などと別の聞き方を記していましたが、そのような方法よりもドッキング機器からストリームして聞く方がずっと分かり易い聞こえです。


こちらの扱い方の問題で、誤った感想を記してしまい。。。申し訳ありません。

発売元のフォナック社にも、大変失礼致しました。)



こうして分かることは、指向性マイクは静かな環境ほど増幅が大きい。

音量は25dBくらいの増幅幅がある、グーンと大きくなった感覚で聞こえるのですから。

ただ、問題点は、静かな環境で指向性マイクを使って小さな音を聞いている時に、その近くで60dBくらいの音が鳴ったり、或いは大きな声で話しかけられると、それらが大きな音になりすぎる。

体感80~85dBぐらいに聞こえるのですよ。

人の声などマイクがかって聞こえるという感じでしょうか。


反面、指向性マイクはうるさい環境にいるほど増幅が小さい。

環境適応制御がされているのでしょうね。

そういう環境では、聞きたい音がリモコン音量1でのように小さすぎるとマスキングされてしまうのですが、聞きたい音の音量もそれなりにあると、10dBくらいの増幅になっているのかなという感じです。

マスキングされて聞こえない部分もあるけれど、指向性マイクが拾う音は周りの音に比べてちょっと大きく聞こえる。

60dBの聞きたい音が体感的には70dB前後に聴こえている感じでしょうか。

雑音がある環境では、指向性マイクで聞きたい音声が聞きやすくなり、助かるわけです。


つまり、環境音によって、あるいは指向性マイクの設定によって、増幅幅が違ってくるのです。

この場合は、ロジャーの送受信を通常の人工内耳装用者とは違う方法で体験しましたから、他の装用者の方とは何か違う可能性はありますが。。。原理的には人工内耳の指向性マイク設定も同じではないでしょうか。


となると、静かなところで強い指向性をかけるマイク設定で使う、或いは超低音を聞くのに指向性を使う、という時には気を付けないといけないかもしれません。

静かな環境だからとか、耳に悪いかもしれないから、と聴取する音量20~30dBの超低音量で聞くというのは、実際にはかなり増幅した音量で聞いているということになるのでは。。。健聴者とは聞こえ方が違うのです。


いずれにしても、ロジャー送受信システムはとても有用で、上手に使いこなしてほしいと思っています。

ただ、いかに有用で素晴らしい商品でも、こうした原理は装用者のQOLの為にもきちんと伝えてほしい。

指向性マイクを使う、或いは環境適応制御を使う全てのメーカーさんに、使用にあたっての説明してほしい点だと思うのですが。。。

手動で、或いは環境適応で強い指向性マイクプログラムや、オプションの無線マイクを使ってみた他の装用者の方々、そうした時の感想はどうだったのでしょうか。